新潟地方裁判所 昭和53年(行ウ)1号 判決 1979年3月12日
原告 工藤清司
被告 村上税務署長
代理人 成田信子 伊藤昭男 古俣与喜男 関秀司 ほか三名
主文
一 本件訴を却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実<省略>
理由
一 <略>
二(一) そこで、まず修正申告行為の取消を求める訴の適否について検討する。
原告によれば、本件修正申告行為は申告意思自体に瑕疵があるから無効であり取消を免れないとするのであるが、その瑕疵に該る事由の有無は一まず置き、国税通則法第一九条による修正申告の法的性質を考えるのに、右行為はこれにより税法所定の税額を確定する効果を生じる納税者たる私人の公法行為に属する一ということはできるが、申告納税主義を建前とする原則の上で、納税者の発意による申告行為の形式を採り、それ以外にあり得ない性質上の限定を本来的に有しているから、行政事件訴訟法第三条にいう公権力の行使たる処分に該当しないことは明暸であり、私人の自発にかかる申告行為についての取消を行政訴訟事件として求めるのは不適当という他はない。
また、本訴が当該修正申告行為の瑕疵による同行為自体の無効を主張して、右各年分の所得税納付義務の不存在の確認を求める請求であるとすれば、訴訟の相手方は租税債権の帰属主体たる国であるというべきである。しかし、原告がかかる確認の訴旨を求める意思がなく、もつぱら修正申告行為自体の違法を行政庁の違法な処分性に求めて争う意思であることは明白であるから、結局本件のような抗告訴訟は許されないという以外にない。
(二) 次に、過少申告加算税賦課決定処分の取消請求の適否について判断する。
過少申告加算税は被告の賦課決定により税額が確定する賦課課税方式を採り、同決定は行政事件訴訟法第三条にいう行政庁の処分に該当するが、右処分について不服のある場合は、国税通則法第七五条第一項第一号、同条第三項及び第一一五条第一項により訴訟提起前に被告及び国税不服審判所長への各不服申立の前置をなすべき旨規定されているところ、本件訴についてはその提起に先だつて不服申立がなされた形跡が無く、またそれについて同条第一項第三号に規定する特段の事由があつたとも認められない。したがつて右経緯に照らせば不服申立前置の要件を欠き、過少申告加算税賦課決定処分取消を求める本件訴は不適法といわなければならない。
(三) 延滞税賦課決定処分の取消請求の適否について判断する。
延滞税の納税義務は国税通則法第六〇条第一項所定の要件を充足することによつて法律上当然に成立するものであり、それと共に、同条第二項等及び同法第一五条第三項第八号により右義務の成立と同時に特別の手続を要することなく税額が確定するものであるから、同税の納税義務の成立もしくは税額の確定に関し所管行政庁としての被告の賦課決定等の何らかの処分は全く存し得ない。したがつて被告の行政処分があることを前提として、その取消しを求める本件訴は不適法なことが明白である。
三 よつて、本件訴はそのすべてを通じて不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 岡山宏 池田真一 小原春夫)